東京地方裁判所 昭和53年(ワ)6941号 判決
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【判旨】
一請求原因1の事実(本件継続的金融取引契約の成立)は当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、原告が昭和四九年四月一〇日訴外会社に対し弁済期を同年六月一〇日に定めて金六五〇〇万円を貸し渡したこと(以下、本件貸付という。)、而して、昭和五一年一一月二九日訴外会社の預金等金一九二四万五三四九円との相殺により、同日現在本件貸付の元本残額は金四五七五万四六五一円となつたことが認められ<る。>
二次に、<証拠>によれば、原告は、昭和四六年七月二三日被告との間で、訴外会社の右取引契約に基づく原告に対する一切の債務について連帯保証する旨の契約を締結した(以下、本件継続的保証契約という。)ことが認められ<る。>
なお、被告は、甲第一号証の約定書の連帯保証人欄に被告が署名押印したことにより負担する義務は原告から訴外会社に対する個々の貸付に際しこれに応諾すべき義務に止まる旨主張するが、甲第一号証の契約文言からして到底そのように解することはできず、被告の右主張は採用できない。
三そこで、進んで抗弁について順次検討する。
1 被告は、抗弁1において本件継続的保証契約により被告が保証責任を負うのは信義則に照らして右契約直後の金二〇〇〇万円の貸付のみであり、本件貸付については保証責任を負わない旨主張する。
そこで、検討するに、<証拠>を総合すれば、訴外会社は高山晃一が経営する不動産売買及び造成等を目的とする株式会社であるが、被告は訴外会社とかねてから取引があり、高山とは深い交友関係にあつたこと、一方、被告並びに被告の経営する豊島ビジネス及び三元企業の会社はかねてからそれぞれ原告と金融取引を継続していたこと、そのころ、訴外会社は、金融機関の取引先を増やしたいという希望があり、被告は、この希望を容れて、昭和四六年六月ころ訴外会社を原告に紹介し、自分が保証人になるから訴外会社との金融等の取引をしてほしい旨原告に依頼したこと、原告は、これを検討した結果、同年七月二三日前認定のとおり訴外会社と継続的金融取引契約を締結するとともに、被告、高山晃一及び小菅安一郎を連帯保証人として期間及び保証限度額の定めのない継続的保証契約をそれぞれ締結したこと、そして、そのころ原告は訴外会社に対し金二〇〇〇万円を弁済期を二年後と定めて融資したこと、次いで昭和四九年四月一〇日前認定のとおり本件貸付がなされたこと、そのころは訴外会社の業績は良好であつたこと、その後、昭和五一年三月になつて、被告から原告宛に、訴外会社へ一億円を融資するよう要請があり、これを受けて原告は訴外会社へ一億円を融資したこと、その直後の同年四月訴外会社は倒産するに至つたことが認められ<る。>
ところで、期間及び保証限度額の定めがない継続的保証契約においては、たしかに、保証契約をするに至つた事情、取引の実情等を考慮してその保証責任を合理的な範囲に制限すべき場合があるというべきではあるが、本件の場合、前記認定事実に照らしてみると、当初貸付の金額や訴外会社と被告との親密な関係からして本件貸付額が全く予想できないほどの融資とはいえないし、本件貸付は契約日から二年八か月余り後であるが、それが相当期間経過後であるともいえず、しかも訴外会社の経営状態が良好のころの貸付であるから、未だ被告の保証責任額に合理的な制限をすべき場合とはいえない。
2 被告は、抗弁2において本件貸付につき原告は被告に何ら通知をしていないからこれについて保証債務を負担しない旨主張するが、仮に原告から被告への通知がなかつたとしても前記認定の事情のもとにおいては本件貸付につき原告に通知義務があるというのは相当でないから被告の右主張は採用できない。
3 被告は、抗弁3において原告の担保喪失行為により保証責任を免れた旨主張するのでこの点について検討するに、<証拠>を総合すれば、原告のため、小菅安正所有の豊島区千川町一丁目五番三の土地について東京法務局板橋出張所昭和四七年六月六日受付の極度額金二〇〇〇万円、債務者訴外会社とする根抵当権設定登記及び停止条件付賃借権設定仮登記が、同所同番九の土地について同出張所同年七月二四日受付の元本極度額金二〇〇〇万円、債務者訴外会社とする根抵当権設定登記及び賃借権設定請求権仮登記が、また右各土地及び豊島区千川町一丁目五番地三所在の建物三棟(家屋番号五番三の三の三ないし五)について同出張所昭和四九年九月六日受付の極度額金七〇〇〇万円、債務者訴外会社とする各根抵当権設定登記がなされていたこと、その後昭和五二年三月四日、右小菅が原告を相手どつて、右各根抵当権設定等を承諾したことはないとしてその登記の抹消を求める訴訟を提起したこと、そして、昭和五三年一一月二一日裁判上の和解が成立し、その骨子は、右小菅が原告に対し連帯あるいは物上保証債務金として確認した金九〇〇〇万円のうち金四二〇〇万円について、右小菅がその弁済に代えて前記五番九の土地と前記三棟の建物のうち二棟(家屋番号五番三の三の三、四)の所有権を、第三者の抵当権の一部を除去したうえ、現状有姿のまま原告に譲渡してその所有権移転登記手続をすること及び原告が、右所有権移転登記手続を受けるのと引換えに前記五番三の土地と建物一棟(家屋番号三の三の五)についてなされている前記各登記の抹消登記手続をするというものであつたこと、原告が右和解に応じたのは、当該訴訟の審理の結果、小菅安正の父である小菅安一郎が勝手に安正の印鑑を使用して根抵当権等を設定した疑いが強く、勝訴の見通しが困難であると原告訴訟代理人弁護士本渡乾夫において判断したからであることが認められるから、右各根抵当権設定登記等の抹消登記手続に応じた事実をもつて、原告が担保保存義務を履行しなかつたものということはできないし、他に右主張を認めるに足る的確な証拠はない。
4 被告は、抗弁4において本件貸付の際重ねて連帯保証した高山晃一に十分な弁済能力があるから、被告に対し本件継続的保証の責任を問う前に、まず右高山の責任を問うべきであると主張するが、債権者たる原告はその選択によつていずれの保証人に対してでも請求しうるものというべきであるから、被告の右主張は採用できない。
5 被告は、抗弁5において本件継続的保証契約成立の日から約七年をも経過して保証債務の履行を請求するのは身元保証と比べて重きに失し許されない旨主張するが、保証の限度額及び期間の定めのない継続的保証契約の場合相当の期間が経過したときまたは予測しえない事情が生じたときは保証人は解約できるのであるから、これを行使しないで、ただ単に契約成立後約七年もの期間が経過したというだけで保証責任を免れるとすることはできない。 (池田克俊)